< 作品「巣」>


〜 作者 四十雀雌 〜




「巣の基礎はコケ(スギゴケ類)だけで作りました。その他の材料は決して使いません。

産座はさまざまな材料を使いました。といってもそれは何でもよいのではありません。

産座には鳥の羽毛はほとんど使わず、手に入りやすい場合には獣の毛をよく使いますが

ほとんどゼンマイの新芽の綿毛や綿を大部分の材料にしています」




「産座の材料としては、獣の毛(イヌ、ヤギ、ネズミ類、モグラ)、ゼンマイの新芽の綿毛、スギゴケの剳ソ

イネ科の枯草の細い茎と根(まれに葉)、シダ類の根、シュロの幹の毛、樹皮を細長く剥いだものを使います。

人家近くではこれらの他に、脱脂綿、毛髪、椅子のクッションに使うパンヤ、絨毯の毛、麻縄をほぐしたものを使うこともあります」




「巣の大きさは孔の広さによって変わります。

孔の床面全部にコケをつめこんで基礎を作りますから

内部の広い孔では大きな巣になり、狭い孔では小さな巣になります」




「巣の高さも一定していません。

ふつうは5〜10センチの高さにコケを積み上げますが、ときには15センチ近くまで積んだこともあります」




「造巣に携わるのは雌の私だけで、雄は一切手伝ってくれません。

しかし、造巣期には雄は私から離れることはなく、忙しげに巣材を運ぶ私に付添って

巣孔とコケ取り場の間を一緒に往復してくれます」




「1回に運ぶコケの量は最初はそう多くはありませんが、すぐに私の頭ほどもあるコケの塊を持って来ます。

ふつうは巣孔からそう遠くない場所(2〜30メートル以内)でコケをとって真直ぐに巣孔へ飛び込み

それを床へ置くとすぐまた出て行きます」




「コケは最初は巣箱の床にでたらめに置きますが

まもなく周囲の壁沿いに多く置き、次いで孔の入り口の下に多く積み、その結果入口の反対側に寄ったあたりに凹みができ

最終的には左右どちらかの隅に寄ったところが小さく凹んだ形にコケを積み上げ、そこが産座の位置になります」




「このコケ運びは雨が降り始めるとどんな小雨でも止めます。

これはコケが濡れているからではありません。雨が止むとすぐに濡れたコケを運びますよ。」




「基礎工事が終るまでのコケを運ぶ総回数は約280回。

気候条件(とくに気温)の影響もありますが・・・」

(現代の記録 動物の世界4 「鳥類の生活」より)




「どうです、私の作品『巣』は?」






<四十雀>