< 戦時住職手帖 >
〜 1942年(昭和17年)5月15日 「真宗大谷派戦時対処事務所実践局」発行 〜
<発行目的>
「戦時下一派の住職、主管者、並に宗徒として必ず心得ていなければならない、重要事項を輯録し、常にその座右に携ふるの便に供せるものである」
(目次)
序
一、詔書
二、大詔を拝し奉りて(内閣総理大臣)
三、教書(真宗大谷派管長)
四、論書(真宗大谷派宗務総長 大谷瑩潤)
五、大東亜戦争の意義
六、日米交渉の経過
七、決戦下に処する住職の心得
八、真宗教徒の心構へ
九、決戦生活訓
十、寺院・教会実践要網
十一、大詔奉載日の行事
十二、挺身報国の歌・挺身報国行進歌
付録
1、日本国独逸国及伊太利国間三国条約
2、日本中華民国間基本関係に関する条約
3、日満華共同宣言
4、日独伊三国間協定
5、日本タイ国間同盟条約
6、日独伊三国間の軍事協定
↓
↓
↓
< 七、決戦下に処する住職の心得 >
一、教化者の使命
国民の士気即ち精神力こそ、一切を左右する根本力といふべきであって、かかる国民の精神教化を擔当する所謂宗教家の使命は、他のあらゆる職域に比して如何に重大であるかを深く自覚しなければならない。
二、長期戦と宗教の力
かかる長期戦下にあって、国民一人一人の魂に、直接触れてゆく宗教の力は、実に眼に見えない感化力と指導力を持つものであって思想国防の大使命を負ふものであるといふことが出来る。(中略)また宗教の力は単に国内のみではなく、占領された現地に於いても、宣撫上大きな力を有するものであって、硝烟の消えやらぬ現地で、怯えきった異民族に、聖戦の意義を知らしめ皇威に服せしむるには、魂と魂の接触を図る宗教の力にまつの外はない。
三、教化指導の方針
宗教の持つ特質的な強化によって、国内の与論の統一指導に努めることが、宗教界に与えられた具体的な擔当部面である。故にその方法としてここに宣伝、啓発、教化の三を挙げることが出来る。
四、宣伝的指導
(イ)大東亜戦争の意義
先ず何が故に戦はねばならないか、何を目的とした戦争であるか、といふことを明確にしなければならない。(中略)これが本当に国民一人一人の腹に入れば、君国の為に、身命を投げ捨てても悔いのないといふ、挺身殉国の精神を生み出すこととなる。
(ロ)日米交渉の顛末
(略)
(ハ)敵国の弱点、虚偽の暴露
(略)
(ニ)正当なる敵愾心の昂揚
敵を眼前に意識することなしに、敢闘的士気の湧きあがらう道理がない。敵を呑むの気概と同時に、つねに烈火の如き破邪の気魄に燃ゆることは、国民生活に隙を生ぜしめないことであって、与論指導には適度に国民の敵愾心に油を注ぐことが必要である。
五、啓発的指導
(イ)啓発と戦闘の相違
たとへ戦闘に勝っても、戦争は解決したとはいへないので、この意味から真の戦争はこれからであることを確認せしめなければならない。(中略)而して最後の勝利にまで国民を敢闘せしめなければならないのである。
(ロ)軍部政府への絶対信頼
我等の政府と軍部を絶対に信頼することが必要で、特に戦争に関する発表の如きは、絶対に虚偽や誇張のないことを信じ、落ち着いて自己の職務を守り通す様せしめなければならない。
(ハ)思想戦としての意義闡明
決して米英の支配的地位に、帝国がとって替って東亜を自由にせんとするが如き、革命的覇道的なる戦ひではなく、崇高な道義的根拠によることを特に強調して国民の啓発に当たることが肝心である。
六、教化的指導
(イ)国民的自覚の発揚
われらは大東亜戦の詔書の大御心を奉戴し、承詔必謹の態度を根本として、強き国民的自覚を発揚せしめねばならない。
(ロ)英米感化の一掃
今なほその思想に生活に米英感化の自由主義的な浸潤が多分に残っていることは見逃せない事実である。
(ハ)国民の心構へ
決戦態勢下国民の心構への基礎として、特に、堅正不却、勇猛不退転の宗教信念の培養が極めて重要であることは、いふまでもない。外部からの宣伝啓発下も、結局は国民一人一人の内省的な心の問題を解決することなくしては、真に忍びて終に悔ひない底の、不動の心構へとはなり得ない。それは信仰の力そのものにあるのである。「一人一人は信をとりたることにて候」の聖訓に恪遵して『真』の上にこそ必勝の果遂ありと断ずべきである。
< 八、真宗教徒の心構へ >
一、真の力
強くあれ、必勝の信念もって職域を守れ
二、奉公の誠
家庭も戦陣、生活を挙げて御奉公の誠を示せ
三、協力一致
国土防衛は協力一致、隣組の力で持場を固めよ
四、絶対の信頼
流言に迷ふな、当局の指示を信頼して行動せよ
五、勇猛精進
国連を賭しての戦いだ、沈着平静、最後まで頑張れ
(大東仁)