< わらべうた俳句 >


(干戈已に罷み、得失還た空ず、樵子の村歌を唱え、児童の野曲を吹く)









”門松の 銭のめどから 朝日さす” (手毬唄)


”天に凧 春の景色の おもしろや” (手毬唄)


”四がんせ 死んでまたくる お釈迦様” (手毬唄)


”大黒様 十でとうとう 福の神” (手毬唄)


”願かけて 一番始めは 一の宮” (手毬唄)


”あっちの山から 豆腐かついで えっさっさ” (手毬唄)


”一つかえ 巡礼お鶴 杖に笠” (手毬唄)


”補陀落や 那智のお山に ひびく滝” (手毬唄)


”横町の お仙の茶屋で 手毬つく” (手毬唄)


”かさ森の おせん出て見よ 玉霰” (一茶)


”和尚さんは 毬がお好きで 毬は無し” (手毬唄)


”子どもらと つきてうたいて かすみ立つ” (良寛)


”山王の 若猿赤い べべが好き” (手毬唄)


”舞扇 猿の泪の かかる哉” (一茶)


”花折りに 三本目には 日が暮れて” (手毬唄)


”天竺へ のぼる道へ 椿ょ植え” (手毬唄)


”一つとや 一夜明くれば 賑やかで” (手毬唄)


”お手毬さま お袖のしたから お渡し申す” (手毬唄)


”道成寺 安珍清姫 蛇に化けて” (手毬唄)


”笹植えて 泣いて涙は 船に積む” (手毬唄)


”梅の花 朝は莟んで 昼開く” (手毬唄)


”あんた方 何処さ肥後さの 肥後何処さ” (手毬唄)


”古狸 手毬木の葉で チョッとかぶせ” (手毬唄)


”清水の 観音様に 雀の子” (手毬唄)


”だんないぞ かァんのかたやと 仰有った” (手毬唄)


”四方の景色 春と詠めて ホ〜ホケキョ” (手毬唄)


”手毬唄 落ちては上がれ 露の玉” (手毬唄)


”三吉さん 夜さりゃ夜っぴて 沓つくる” (手毬唄)


”黒猫が お白粉つけて 紅つけて” (手毬唄)


”帰ろうや もう彼此 三時半” (手毬唄)


”二十一 三十振袖 四十島田” (お手玉唄)


”一人でさびし 二人で 参りましょう” (お手玉唄)


”袂から 火が出る雀 三羽出る” (お手玉唄)


”御坂々 四谷赤坂 お茶の水” (お手玉唄)


”うぐいすや 梅の小枝に 昼寝して” (お手玉唄)


”梅咲けど 鶯鳴けど ひとり哉” (一茶)


”お駒さん おん白々の 白木屋の” (手毬唄)


”石なごの 一二三を蝶の 舞にけり” (一茶)


”月ならば 拝み申すが 蛍ならば” (お手玉唄)


”一かけて 橋の欄干 腰かけて” (お手玉唄)


”一月を 落としておみんな おさら〜い” (お手玉唄)


”おじゃみじゃみ おみィおみなァ とォんきり” (お手玉唄)


”ひいふうみよ サラリと受けては 花模様” (お手玉唄)


”ぢさの木さ 美し鳥コ と〜まった” (羽子突唄)


”夜明くれば 年始のお祝い 申します” (羽子突唄)


”一人来な 二人見て行き 寄って来な” (羽子突唄)


”ひとめふため みやこしよめご ここのやとお” (羽子突唄)


”一びの木 十でとって 歳の木” (羽子突き唄)


”ひいやふう みやよいつむな ここのとお” (羽子突唄)


”おんみつさん 頭巾かぶって 御結び十” (羽子突き唄)


”赤い山 ねんねの寝た間に 赤い鳥” (子守唄)


”寝ろじゃ寝ろ ねねぼ山から もッこァ来るァね” (子守唄)


”かねこもり 散緒の雪駄に 長羽織” (子守唄)


”おんもりや 遊ばせながらも 泣きながら” (子守唄)


”ホラ宝来 田舎じゃ菜種の 花ざかり” (子守唄)


”泣いてくれるな 泣くと出船が 出そくなる” (子守唄)


”ねんにゃこよ おれの愛で子さ ひとりして泣く” (子守唄)


”寝ろでばや 西が曇れば 雨となる” (子守唄)


”ねろねろや せんどのやんまの ドンコロは” (子守唄)


”オワイヤレ 起ぎっと夜鷹に さらわれる” (子守唄)


”ゆったりこ 寝ていりゃ遠くで 波の音” (子守唄)


”ねんねしな 大黒様へ 参ります” (子守唄)







”ホラねろや 泣かねでねろや ねんねろや” (子守唄)


”かわいもな 抱きたいわの 守りともに” (子守唄)


”山越えて 杉や檜が 親のよで” (子守唄)


”まま炊いて 一生この子が 豆なよに” (子守唄)


”よくねやる 守りは十時の 鐘を待つ” (子守唄)


”ねんねしな ねんねのお守りは 何処へ行た” (子守唄)


”限りなさ 天に上れば 星の数” (子守唄)


”おべろんや 起きたらあげるで ねんねしな” (子守唄)


”ころいちや 起きて泣く子は 面憎い” (子守唄)


”泣くなよう 誰もやかまし ゆてくれな” (子守唄)


”こんぼうよ ねんねねさんせ とこさんせ” (子守唄)


”ようかいよ よっとこの子が 寝たなろば” (子守唄)


”ヤ〜ハエ〜 三丁長嶺の 桜の木” (子守唄)


”守さ子守さ 晩げ遅うまで 門に立つ” (子守唄)


”つらいぞえ 早くお母の 顔みたい” (子守唄)


”菜は菜連れ 麦ははしこて 連れがない” (子守唄)


”ねんころろん 枕ものゆうて 寝たというた” (子守唄)


”ふところに 抱いて寝かせて くださった” (子守唄)


”おころりよ 日暮れの花の つぐまるように” (子守唄)


”守の役 雨が降る時ァ 宿が無い” (子守唄)


”見おろせば 瓜や茄子の 花ざかり” (子守唄)


”ねんねねさせて 親はこたつで 針仕事” (子守唄)


”網ほしや 網がゆらゆら 由良之助” (子守唄)


”稲こすり 一丁でゃあて なわさいた” (子守唄)


”子兎は なぜにお耳が 長うござる” (子守唄)


”日が暮れて 空には青い 星一つ” (子守唄)


”御寮さん 見かけ良けれど 渋ござる” (子守唄)


”さるけさるけ 猿の子牛の子 ね〜この子” (子守唄)


”泣くないよ 坊やの母様(あんま) 何処(だち)もうち” (子守唄)


”親ぬ産し 御蔭粗相に 思んなよ” (子守唄)


”泣くなくな 泣かなしゅてィ太(ふ)でり 花ぬわらび” (子守唄)


”月ぬ美(かい)しゃ みやらび美しゃ 十七(とうなな)つ” (子守唄)


”ベ〜ベ〜の 草刈り畑の 若葛(べ〜べ〜ヌ クサカイハ〜ルヌ ワカカンダ)” (子守唄)


”山原 隣の婆前に 語んなよ(ヤンバ〜ラ トゥナイのハ〜メに カタんなよ)” (子守唄)


”太鼓橋 みんなで渡ろ 手手ひいて” (虹)


”凧あがれ 空風かんこ ふうりうと” (風)


”富士の風や 扇にのせて 江戸土産” (芭蕉)


”風貰おう 稲佐山から 風戻そう” (風)


”豆狸 徳利もって 酒買いに” (雨)


”雨降んな お山の子どもは 蓑笠持たん” (雨)


”勘三郎 早く帰って 水かけろ” (夕焼け)


”山の爺 雲はあっぱい べべ着いて” (夕焼け)


”十五夜の 月見てはねる 白兎” (月)


”お月さん 十三七つ 年ァ若い” (月)


”お月様 桃色いうた 海女いうた” (月)


”十五夜さん そ〜こで星ァ 出さっさん” (月)


”大寒小寒 山から小僧 泣いて来た” (寒気)


”むら時雨 山から小僧 ないて来ぬ” (一茶)


”雪こんこ 霰やこんこ 牡丹雪” (霰)


”雪ちらり ちらり見事な 月夜哉” (一茶)


”上見れば 虫コ綿コ 降る小雪” (雪)


”こんこんと お寺の柿に つもれ雪” (雪)







”雪と雪 今宵師走の 名月か” (芭蕉)


”初雪や おら家の前さ たんと降れ” (雪)


”雪ちらちら 一天に雲 なかりけり” (一茶)


”柿の木に 一杯つもれ 雪と星” (雪)


”じいじいの 綿帽子雪が 降るわいの” (雪)


”雪やコロ 天竺橋の 橋の下” (雪)


”雪ぼんぼ 堅雪ぼんぼ 猫ぼんぼ” (雪)


”肌とよし 天のあねさま 肌よくなァれ” (雪)


”ななこんばい 明日は旦那の 稲刈りだ” (雪)


”雪花の 散る花空に 羽根が舞う” (雪)


”むら雀 麦わら笛に 踊るなり” (一茶)


”和尚さまに 頼んでまま上げ 泣く蛙” (蛙)


”夕不二に 尻を並べて なく蛙” (一茶)


”かたつむり 花の園まで 遊ばせん” (蝸牛)


”足元へ いつ来たりしよ かたつむり” (一茶)


”かたつむり そろそろ登れ 富士の山” (一茶)


”うしもう〜 牛ァかかもたれん 鳴きよらす” (牛)


”七夕様 どうぞこの手に あがるよに” (七夕)


”蛍こい 行燈の光で 又こいこい” (蛍)


”行け蛍 手のなる方へ なる方へ” (一茶)


”大蛍 ゆらりゆらりと 通りけり” (一茶)


”故郷の 夢を見てとぶ 蛍かな” (一茶)


”ホホ蛍 昼は蓮華の お露のみ” (蛍)


”愚にくらく 棘をつかむ 蛍哉” (芭蕉)


”谷川の 水呉りゅうホホ 蛍こい” (蛍)


”じんじんじん 酒屋の水くゎて あがれよさがれ” (蛍)


”えんしょうこ 坊やに半纏 ひっかけろ” (蝙蝠)


”やもよやも おとんに目かけて ござらんか” (蜻蛉)


”夕日影 町一ぱいの とんぼ哉” (一茶)


”とんびとんび にしえコ呉るがら 廻れ廻れ” (鳶)


”菜畠に 花見顔なる 雀哉” (芭蕉)


”勘三郎 うが家さ寄って かっぽっげ” (烏)


”どごさ行ぐ 烏湯さ行ぐ 天寧寺” (烏)


”柘榴三つ 宙で取ったら 皆やろぞ” (烏)


”雲の原 赤いぞ早く 水かけろ” (烏)


”雁渡れ 仲よく渡れ 後先に” (雁)


”夕暮れの 松見に来れば かえる雁” (一茶)


”鉤になれ たいころばちの ふたになれ” (鶴)


”ずくぼんじょ 頭巾かぶって 出てこらさい” (土筆)


”げんげ摘も 今年のげんげは よう咲いた” (蓮華草)


”ゆっさゆさ 桃が生ったら 誰にやろ” (桃)


”秋グイミ いとこはシャシャブ 渋いけんど甘い” (茱萸)


”蓬莱に 南無南無という 童哉” (一茶)


”歳の神 交譲交譲 ご〜ざった” (正月)


”正月さん 榧や搗栗 繭玉ふって” (正月)


”ええもんだ 赤いべべ着て 羽子ついて” (正月)


”のんのかバイ オランダさんから もろたとバイ” (正月)


”焼いた餅 六つむつまじ 夫婦餅” (正月)


”せりなずな ごぎょうはこべら 仏の座 すずしろすずな 合わせてバッタバタ” (七草)


”追ってやれ 生畔渡りの 里烏” (鳥追い)


”まくらった 雀すわ鳥 立ちあがれや” (鳥追い)


”どんと焼き 扇めでたい 末繁盛” (左義長)


”どんと焼き どんどん雪の 降りにけり” (一茶)


”田螺どんさん お彼岸参りを さっせんか” (彼岸)


”三ヶ月や 田螺をさぐる 腕の先” (一茶)


”百八燈 じじばば舟に 乗りなれも” (彼岸)


”盆ならさん 帯買うておくれ 繻子の帯” (盆)


”よいさっさ これから八丁 十八丁” (盆)


”糸桜 赤前垂れに 繻子の帯” (盆)


”おんごくなはは 草の葉陰で 灯をともす” (盆)


”天の星 数えてみれば 九千九つ八つ七つ” (盆)


”亥の子さん お白粉つけて 紅つけて” (亥の子)


”蓮華花 夢のうちにぞ 咲き始め” (輪遊び)


”羅漢さん 揃たら廻そ ヨイヤッサ” (物真似遊び)


”田螺や田螺 ズックラモックラ 隠れ籠” (かくれんぼ)


”山居せば 奥より奥に 隠恋慕” (かくれんぼ)







”通りゃんせ 天神様の 細道じゃ” (関所遊び)


”栴檀の 家のくぐり戸 よかところ” (関所遊び)


”ほォしんじょ 羽コ呉らはで 飛んで来い” (子取り遊び)


”故郷を 求め花いち もんめかな” (子取り遊び)


”欲しや欲し 金襴緞子に 繻子の帯” (子取り遊び)


”山越えで 川越え尻尾が アレ見える” (狐遊び)


”おっくんさん 早起きァお遊び おいでんか” (狐遊び)


”何処行くの わたしも一緒に 連れしゃんせ” (鬼遊び)


”いつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀” (鬼遊び)


”京の三十三間堂が 焼け残った” (鬼遊び)


”灸すえ 泣くや悲しや 金仏” (鬼遊び)


”弘法さん 痛や悲しや オゲゲのゲ” (鬼遊び)


”テレレッポ かさ売り雀 おぼこたち” (草履かくし)


”子ねずみが 草履をくわえて ちゅんちゅくちゅん” (草履かくし)


”じゅんじゅんと さ〜ぎになって ぬげろんじょ” (下駄取り遊び)


”どっちかち 恵比寿大黒 取らば取れ” (物選び遊び)


”青山の 土手から青い 鳥が三つ” (手合わせ唄)


”橘の 二に杜若 獅子牡丹” (手合わせ唄)


”パラリコセ 雛が籾食て たいのこたいのこ” (手合わせ唄)


”達磨の子 いの字一切 いんじゅうじ” (手合わせ唄)


”乙姫様 富士の高嶺に 蜻蛉の目” (指遊び)


”麦ついて 信太の森の 白狐” (玉まわし唄)







巌 句 集 T・U





 「わらべうた」の漢語である「童謡」ということばは、上代歌謡の場合、今日における童謡という概念とは著しく異なり、一般に人事を風刺する寓意的、比喩的な性格をもつ歌謡を意味した。


 「童謡」の文字には大抵「ワザウタ」又は「ワザウタシテ」の古訓が施されているので、古来、「ワザウタ」の「ワザ」は「ワザハヒ(禍)」または「カミワザ・カムワザ(神態)」の「ワザ」、或は「シワザ(風俗)」、「ワザヲギ(俳優)」などの「ワザ」と同じく、所作・芸能等の意であるなどの説が行われている。しかし、「ワザウタ」が何らかのコトを達成するための「うた」であり、行為をもつワザのある「うた」であるとする点においては衆説一致するので、大体、「コトワザ(諺)」が世間に言いふるされているコトバを意味するのに対し、「ワザウタ」は「うた」によって行うワザ(ウタワザ)の一種ぐらいの意に考えるのが最も穏当であろう。